革職人の手記

DOUBLEMOON史上最高の強度を誇る革財布~日本刀にも使われる素材

DOUBLEMOON星野です。
2種類の素材を使って新しい財布を作りました。
お披露目を現在三田阪急で行っています。
今日はそのうちの一つを紹介します。
ラウンドファスナー長財布です。
素材は、ガルーシャ。エイ革です。アメリカではスティングレイといわれるそうです。
この素材、日本にも非常になじみ深い革です。
古くは奈良時代の聖武天皇の佩刀とされる太刀(金銀鈿荘唐大刀)の柄にも使われていたといわれます。
この太刀は正倉院に、現在でも非常に良い状態で保管されています。
日本では、このように日本刀の柄の部分に滑り止めとして使用されていたそうです。
剣の柄としての役目を終えた後も現代では、お寿司屋さんにあるワサビおろしとして利用されています。
また、丈夫さにも定評があるエイ革。
一般に「牛は30年、エイは100年」持つといわれるほど、長く使えるエイ革。
金銀鈿荘唐大刀の例を見ると1000年近く残っているので、その寿命の長さがうかがえます。
ご自身が購入してお子さんに渡してもまだまだ使える代物ですね。
その丈夫さとともに見た目も魅力の一つです。
全体に宝石のような粒がびっしりと張り巡らされ、一つ一つが輝いて見える上に、中央にスターマークと呼ばれる大きな粒があります。
これが、ラッキースターなどとも呼ばれ幸運のしるしとされています。
個体一つ一つ、この形状が異なるので見ていて面白いです。
ちなみにスターマークは1匹に1つしかありません。

ガルーシャはこんな感じの革です。
しかもこの革、人間の歯と同じ「リン酸カルシウム」でできているので、触るとひんやりと冷たい何とも言えない手触りです。
これほど興味深いエイ革なのに、なぜあまり市場に出回らないのか・・・。
実は加工がとても難しいからです。
リン酸カルシウムでできた素材は、革包丁が通りにくく、まっすぐ切ることさえ儘ならないです。
また、リン酸カルシウムが大小ランダムに配置されているので、縫うにもステッチが乱れやすいです。
さらに、その素材故コバ処理も、非常に困難です。
そのため、ガルーシャで製品を作るときは、周囲を牛革で巻いて作ったり、インレイといって牛革の中心を切り抜き、装飾的に一部にガルーシャを使うのが一般的です。
しかしながら、水にとても強いガルーシャの特徴が、牛革を挟むことで損なわれるのがもったいないため、何とかガルーシャをそのまま縫うことにしました。
そして完成したのがこのラウンドファスナー長財布です。
非常に分かりにくいですが、革をぷっくりと膨らますことで、ステッチを沈め、手に当たりにくくしています。
こうすることで、ステッチの乱れを極力抑えるとともに、摩擦によるステッチ切れを抑えています。
コバは、専用の道具でガルーシャを削ることで丸みを出すことに成功しました。
ガルーシャの粒粒が、コバでも確認できるかと思います。
内装は、生成りにして、ファスナーを開けた瞬間、パッと華やかに見えるよう工夫しております。
マチ付きの小銭入れと12か所のカード入れ、2か所の札入れは、シンプルながら使い勝手抜群で、ラウンドファスナー長財布の中では一番人気の形です。
ほかにもガルーシャの特徴はいろいろありますが、一言でいうと「メンテナンスいらずで長持ち、かつ独特の表情は注目を集めること請け合い」ということです。
あ、、二言になってしまった(笑)。
実物は写真で見るより数倍美しく見えます。この機会にぜひ三田阪急までお越しください。
三田阪急イベントについて)
日程)3月18日(水)~24日(火)
時間)10:00~19:00
場所)三田阪急

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