革職人の手記

内縫いの鞄

展示会が終わって2週間。

展示会に来ていただいた方、大変ありがとうございます。おかげさまで盛況のうちに終わりました。

この2週間、オーダーいただいていた財布や鞄を作成していました。

今回オーダーいただいていた鞄はトートバッグで、価格にこだわられていたため、クロム革を使用しました。

ダブルムーンでは通常フルベジタブルタンニンの革を使用します。フルベジタブルタンニンの革は、使うほどに経年変化する「革らしい革」ですが、革をなめすために、タンニン液に数か月漬け込む必要があり、制作に時間がかかり、そのため価格も高くなります。

一方クロム革は、塩化クロムという化学薬品に数週間漬け込み制作されます。効率的に作成できる分安価で購入でき、さらにフルベジタブルタンニンよりも、柔らかく革の表面も均一になります。

そのため、市販の革財布や鞄はクロム革を使用している場合が多いです。

さて、オーダーいただいた鞄は、トートバッグ。こんな感じに仕上がりました。

コンパクトサイズですが、A4サイズがジャストサイズで入る鞄です。

内縫い(縫い目が外側に出ない縫製)なので、縫い目が外に見えず柔らかい作りとなっています。

クロム革は、コバ(革の端)の処理ができません。タンニン革では、染料を入れ、蜜蝋で固め磨くことを繰り返し、コバをピカピカにします。

この処理ができないため、今回はコバ部分に薄く漉(す)いた革をテープ状にして、巻きました。

 

これも市販の鞄でよく行われる革ですが、手縫いでこの処理をするのは大変手間がかかります。

鞄本体と、テープにそれぞれ別々に穴をあけ、両方の穴が合うように縫いこむ必要があります。

その分完成すると美しいコバになります。

ファスナー付きの蓋を取り付けて完成しました。

 

 


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